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事務所に行った日から一週間後の夜。部屋で宿題を済ませた瑠馬は、リビングで家計簿をつけている母に声をかけた。
「母さん、話があるんだけど、今って大丈夫?」
「いいよ、どうしたの?」
瑠馬の母は走らせていたペンを止めて、隣に座った瑠馬のほうを向いた。
「あのさ、俺がアイドルになりたいって言ったら……どうする?」
一瞬驚いた瑠馬の母だったが、すぐに優しく微笑んだ。
「応援するわよ、全力で」
言うと思っていた。母はいつも自分のやりたいことを笑顔で全部了承してくれた。
「でも俺、高校入ってバイトできるようになって、母さんを楽にできると思っていたのに、また頼み事なんかして……」
視界が滲んで、声が震えてくる。自分が家族を守ると決めた日から、泣くことは常に我慢してきた。でも今は、今だけはどうしても止まらなった。そんな瑠馬を見た瑠馬の母は、優しく瑠馬を包んだ。
「大丈夫よ。お母さんは大丈夫だから。あなたが夢に向かっていろんなことに挑戦してくれるだけで、お母さんはとっても嬉しいから」
「……本当にいいの? 父さん、怒らないかな?」
「お父さんも応援してくれる! 夢は大事にしろって言っていたでしょ?」
「……うん、そうだね……本当にありがとう、ありがとう」
自分の気持ちを素直に言えた瑠馬は、アイドルになることを心から決意した。
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