第五章
1/2
6/47

第五章

 手術が終わったあの日から、どれくらいの月日がたったのだろうか。それすら分からない。  馬と俺の体が完全につながり、内臓が機能するようになるまで、それほど長い時間がかかった。看護師たちも、「ここまで時間がかかるとは」と驚いているらしい。  ということで、時間はかかったが、俺の体は完全なる「ケンタウロス」と化した。  もう痛みも感じないし、点滴が必要なくなり、ちゃんとした食事が摂れるようになった。  抜糸も終え、姿かたちはケンタウロスそのものである。    病室に鏡がないので今まで気付かなかったが、顔も整形されたらしい。顔に、ギプスが巻かれていることにも気付かなかった。それには、自分のことながら驚きだ。前のような、「みすぼらしい中年男性」から「凛々しい紳士」に大変身していた。 「痛みは感じますか?」 「全く。」 でたよ。この、看護師の質問攻め。あー嫌だ嫌だ。いつもみたいに、また何十問も答えなきゃいけないんだ。 「おー、それはそれは。めでたいことです。」 あれ、この棒読みな返事は…質問が終わった後で発する鳴き声だぞ。    まさか、今日の質問はこれで終わりか? 「じゃあ、やっとリハビリ始められますね。」 おお~! …って、リハビリ? 「リハビリ…ですか?」 「ええ。だってまだ、歩けないですよね。」 「えっ! そうなんですか?」 「え、じゃあ逆に歩けるんですか!?」 「えっと、う~ん…。どうなんだろう。」 「だって、村田さんは、その姿でベッドから出たこと無いですよね。」 「あ、そういえばそうかも。」 「ですよね、よかった~。じゃあ、その慣れない姿じゃ、そう簡単に歩けるようにはならないでしょうから、リハビリやりましょう。」  確かによく考えてみると、俺はこの姿になってから一度も歩いていない。イマイチは実感は湧かないが。
6/47

最初のコメントを投稿しよう!