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真実の行方
真ん丸な満月が見下ろすコンクリートジャングル。
白く冷たく輝くビルの上で、桜の花びらが混じる風に、黒髪をなびかせる少女。
下ろし立てのパリッとした制服のミニスカートが時おり瞬いていた。
その少女は咲だった。
一年間の過酷な経験を乗りこえ、さらに今年で中学生となった彼女。
あどけなさのなかに、しっかりと凛々しさが混じっていた。
そして今、彼女は最大の敵と対峙していた。
「朋美ちゃんを返してもらいます!」
咲は本スティアを構えた。
それを、電波塔の上で見下ろす、淡白い光を背にして、面向きを真っ暗に染め上げる男。
顔を銀色の仮面で隠し、そして月の雫と見紛う程の輝きを放つ銀色の長髪を春の風に泳がしている。
男は空中で何かを掴むように手を出した。
「ルークス」
そして、何もなかった手の中の空間を切り取り、1メートル程の長めの杖と置き換えた。
黒く光沢のある、先が少しアールがかったシンプルな杖。
ところどころ銀であしらわれた装飾が月の光で怪しく光。
「お前を殺し、私がその本のマスターとなる」
"我、闇の眷属なり、我が力を、糧とし集え、従え"
男の杖はどす黒い輝きを放つ。
彼が池の魚に餌を撒くように杖を一振りすると、一筋の黒い靄を作り出した。
それは、イビツに膨張を繰り返し異形の者達へと姿を返る。
肩がなかっり、顔がなかったり、片腕がなかったり、足がなかったり、そうした者達が子供位の背丈で九体。そして五体満足な大人の背丈をしたのが一体現れた。
それをみた咲の手元の本のスティアが言う。
「あれは、デーモン召喚、日本で言う式神よ。あの大きいのが特大魔法を溜めて小さいのがガード役よ気を付けて!」
咲が表紙を開き「フライ」と呼ぶ。
その声に合せ本スティアはパタパタとページを開き、止まったページから一枚のしおりを飛び出させた。
咲がそのしおりを受け入れるように両手を開くと、しおりは耀きを放ち彼女の胸に溶け込むように同化する。
その瞬間、彼女の背中に突如現れる大きな翼。
漂う桜の花びらを掻き乱すように大きくあおぐ。
小さな光の羽がより集まった魔法の翼だった。
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