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一本目と二本目のときは雨で、三本目はくもりの日で、四本目はまた雨の日だった。季節柄、気温はそこまで高くなくても空気がしっとり湿っていて、気づくとほんのり、汗が滲んでいたりする。フローリングに敷いているラグマットも、なんとなくしんなりとしていて、座ってはいるものの、あまり心地が良くない。
ローテーブルに、突っ伏すみたいにして半身を投げだす。頬に当たる木目調の天板が、ひんやりしてすこし気持ちがいい。わたしはそのまま行儀悪く、チョコレートをひとつ大袋から出して、口に放りこんだ。安っぽいミルクチョコレートが、口の中でもったりと溶けてゆく。
「頭いたい」
「雨で体調が悪いときは、耳をマッサージするといいって。何かで読んだ気がする」
「ふうん」
「やってあげる。きて、こっち」
呼ばれるままふらふらと、ベッドへ向かう。彼女はひとのベッドに片膝を立てて座りながらアイスを食べていて、正直行儀が悪いと思った。けれど、机にだらりと身体を預けながらチョコレートを頬張っていた自分だって似たようなものだ。仕方がない、雨の日だから。雨の日だけは、パウンドケーキをカットせずにかぶりつくようなだらしなさも、許されるような気がする。
「ちょっと持ってて」
「うん」
食べかけのチョコレートミントアイスを持たされる。半分のところまでかじられたそれは、すでに端のあたりが溶けてきていた。
「これ、はやくたべないと崩れるんじゃない」
「かわりに、たべちゃっていいよ」
彼女の手が耳に伸びる。遠慮がちな触れ方はすこしくすぐったい。
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