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「レタスはいつもどおり半分でいいね? トマトはいくつにする?」
「うーんと、じゃあ3つ」
「はいよ。とれたてだから美味いよ」
大将は、レタス2分の1個と籠に入ったトマトを手際よくそれぞれビニールに詰めてくれた。
「いいねえ。明日っから夏休みだろ? どっか遊びに行くのかい?」
「友達とプール行く約束はしてるけど、まだよくわかんない。帰ってからヒロ兄に訊いてみないと。ヒロ兄も明日から夏休みなの」
「偉い学者先生だもんなあ。若いのにたいしたもんだ。あれ、なんてったっけ? センセが研究してるガクモンは」
「ん、とね、シューキョーミンゾクガク? 家に難しい本がいっぱいあるけど、あたしにはちっともわかんないの。でも、ときどき入ってる挿し絵とかは面白くて好き」
「たしか去年の夏も、ガッカイとかの集まりがあるってんで、旅行がてら雛姫ちゃんも熱海に連れてってもらってたもんなあ」
「白浜だろ? なんだい、温泉てとこしか合ってないじゃないか」
奥からお盆を手に戻ってきたおかみさんが、雛姫にオレンジ・ジュースとマドレーヌを勧めながらすかさず横槍を入れた。
「うるせぇな、どっちだって似たようなもんだろ。あ、雛姫ちゃん、そこ座んな」
手近の丸椅子を勧められ、雛姫はお礼を言って受け取ったグラスを手に腰掛けた。
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