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「しかし兄妹ふたりっきり。ほんとによくやってるよ。近頃ロクなガキどもがいないってのに、立派なもんだ」
「ほんとにねえ。いまどき感心な子たちだよ」
夫婦の手放しの讃辞に、雛姫は「そんなことないです」とはにかんだ。
「あ、もちろんヒロ兄は立派だけど」
「雛姫ちゃんだって充分偉いよ。家事全般、忙しい兄さんに代わって引き受けてるんだろう?」
「うん。でも料理とか好きだから、全然大変じゃないの。ヒロ兄みたいに難しいのはまだできなくて、簡単なのしか作れないんだけど」
雛姫が照れたように笑うと、大将はもう一度、偉いねえと呟いた。
「料理が上手で気だてがよくてしっかり者で、おまけに将来べっぴんさんになること間違いなし! 雛姫ちゃんの旦那になる男は果報モンだ。センセもいまから可愛い妹を嫁にやりたくなくて、やきもきしてんじゃないのかい?」
「なに言ってんだい! まだ小学4年生じゃ早すぎるよねえ?」
「ばぁか、おまえ、男親なんてのはみんなそんなもんだ」
「よく言うよ、女の子の父親なんかやったことないくせに。うちにいるのは家の手伝いひとつしない、むさくるしいドラ息子たちばっかりじゃないか」
「まったくだ。おいちゃんも雛姫ちゃんみてえな可愛い娘が欲しかったなあ」
「突然変異でも起こらなきゃ、うちにこんなできた子、生まれやしないよ」
雛姫はクスクスと笑いながらふたりのやりとりを聞いた。
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