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__私の夢は終(つい)えた。
※※※
父の背中を見て生きてきた私は、゛正義゛に憧れていた。
悪人を裁き、善良者を守る。当たり前のことであるけれど、実行に移せる者はこの世界にどれだけいるだろうか。
尊い職務に身を捧げる父が自慢だった。
滅多に会えなくても平気だった。帰ってきた時には、いつも頭を柔らかく撫でてくれたから。
表情の乏しい彼が、その時だけは微かだが嬉しそうに見えたから。
男手ひとつで私を育ててくれた父。
少し皺のついた背広を掴みたくて、子供の頃は必死だった。少しでも早く大人になり、彼の背に手を沿えたかった。
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