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子どものごっこ遊びの設定に、正確なディテールや辻褄合わせなどを求めたら、途端に白けてしまうでしょう。 わたしは毎日学校から帰宅すると、制服を着替える間もなく、妹に乞われるまま、ごっこ遊びに興じました。わたしが姿を見せると、妹はたいていとびきり嬉しそうな笑顔を浮かべ、 「朝からずっと、ずうっと待っていたのよ。これ以上待ったら首が伸びすぎて、ろくろ首になってしまうかと思うくらい」 と、悪戯っぽく頬を膨らましてみせるのでした。 「ねえ、ダイアナ。今日は何をして遊びましょうか。おばけの森を探検するの、楽しそうじゃない? ……でもだめね。今日はあいにく雨だもの」 学校へ行くことも外へ出ることもしなくなった妹は、そのうち最低限の用事以外で自室から出ることすらもなくなりました。同時に、わたし以外をお部屋に招き入れることも。父や母が入ろうとするものなら、ものすごい剣幕で叫び声を上げました。夢の国の話をするときとは、別人のような金切り声で。 「出て行って! 大人は嫌いよ!」 「あなた誰なの! ここはわたしのお城よ、勝手に入らないでちょうだい!」 「ベッキー、助けて! 追い出して、はやく!」     
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