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こんな風に、あなたと向かい合ってテーブルにつくようなことは初めてだとういうことに、ふと思い至りました。カウンター越しに向かい合うことは、何度もあったのに、です。 薔薇の描かれたティーカップを、あなたは両手で包むようにして持ち上げました。湯気のたっていない、カップの中の透明な液体を見つめているあなたを、わたしは知らないものを見るような気持ちで眺めていました。カップの中に、いったい何を見ているのでしょう。それはあなた自身でしょうか。それとも。 あなたはしばらくするとティーカップを置いて、言いました。 「かわらないのだね、きみは」 わたしはそれに、首をかしげることで応じました。 「ところで、何でしょうか。約束というのは」 「ああ、そうだった」 するとあなたはおもむろに、シャツのボタンを上から三番目まで外しました。首の後ろに手をまわし鎖の留め具を外すと、シャツの中からそれをゆっくりと抜き出します。それは蛍光灯のぼんやりとした照明を受け、わたしとあなたの間で鈍く光りました。 「さあ、約束だよ」 あなたは金色をしたそれを、わたしの両手のひらの上にそっと落としました。わたしはそれを、古い友人に再会したときのような、懐かしさの中に一滴の戸惑いが混ざったような気分で見つめました。 さらさらと砂がこぼれ落ちる音が、耳の奥に聞こえてきます。 今度は幻聴ではないようでした。 *     
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