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あなたの時間の秘密を知ったのは、わたしが十七回目の誕生日を迎えてからさほど日を置かない、ある雪の日のことでした。
あなたはいつものようにウールのジャケットを身に着けて、時計の中を揺蕩っていました。わたしの他にお客はなく、店内には音もなく降り続ける雪のようにしんと静謐な空気が満ちていました。
時間に色と形があることを知っているか、とあなたはわたしに尋ねました。
いいえ。
首を横に振ったわたしに、あなたは「あなたの時間」を見せてくれたのです。
それは、金色の鎖につながれた砂時計でした。
たまごがふたつ縦につながったような、つるりとした形の砂時計。その中では、細かい金色の粒子がさらさらと音をたてながら、淡い光を放っていました。よく見ると、小さな粒のひとつひとつは星の形をしていました。
わたしは思わず目を細めました。直視し続けるには、それはわたしにとって少々眩しすぎたのです。
「きれいですね。星砂ですか」
「ああ、そうだよ。これは死体なんだ」
「死体……」
「そう、有孔虫という原生生物の死体」
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