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ですから、あなたがあなたの秘密をわたしに見せてくれたのも、単なる暇つぶしに似た気まぐれで、特別な意味など存在しないのだと思っていました。けれど、自分があなたにとって特別な存在なのかもしれない、などという傲慢な考えが一度も浮かばなかったと言ったらそれは嘘になります。
わたしはある種賭けのような気持ちで、あるとき、あなたにひとつ「お願い」をしました。
それは、あの金色を閉じ込めた砂時計のことでした。
「あの砂時計を、わたしにください」
あなたは穏やかに、けれどきっぱりと首を横に振りました。
「あれは、わたしの時間だからね。例えきみが持ったとしても、ただの砂時計以上のものにはならない」
「それでも良いと言ったら、くれますか」
「そうだね……この砂がすべて落ち切った後でも良いのなら」
それが何を意味しているのか、わからなかったわけではありません。
「それでも良いです」
「いつのことになるか、わからないよ」
「良いです。いつか――いつかで良いのです」
そのときがきたら、あなたはあなた自身が星砂になるのだと言っていました。
わたしが砂時計を受け取る日、その中を流れる金色は、いったい「誰」なのでしょうか。そのとき、あなたは、わたしは、いまのままの「あなた」と「わたし」でしょうか。カウンターから出てこない時計店の店主と、迷惑なお客。わたしたちは、「そのとき」がきても、そういう関係であり続けているでしょうか。
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