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わたしはあなたに、もう一度あなたの秘密を見せてほしいと頼みました。わたしは、知りたかったのです。あなたが金色の秘密に向ける眼差しのあたたかさの理由を、その甘い微笑の理由を。見たところで、わたしにわかるはずもなかったのですが、それでも、知りたかったのです。
あなたが大切そうに抱きしめている、その砂時計の中で光る砂。
それはいったい「誰」だったのですか。
*
わたしは手の中で光を宿している砂時計と、あなたとを交互に見比べました。それから砂時計をあなたに返そうと手を伸ばしましたが、あなたはそれをやんわりと押し返します。
「遠慮する必要はないよ、約束だからね」
「いいえ、いいえ」
わたしは首を横に振りました。その動作しか覚えこまされていない、出来損ないのカラクリ人形のように。いいえ、いいえ、と、わたしは壊れたレコードのように繰り返します。
「あなたと結んだ約束は、違います」
「違わないよ」
「わたしは、いつか、と言ったのです」
「いまが、そのいつか、なんだよ」
「いいえ、そんなはずはありません。だって、あなたは」
あなたは?
わたしの頭の中に、突如として疑問符が浮かびます。
あなたの頭は、そんなにも高い位置にあったでしょうか。
あなたの姿は、そんなにも澄んだ水のようだったでしょうか。
あなたの存在は、そんなにも透明なものだったでしょうか。
どうしてあなたは、一度もティーカップに口をつけないのでしょうか。
どうしてあなたは、玄関で靴を脱がなかったのでしょうか。
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