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そんなことにすら、いまのいままで気づくことのできなかったわたしには、ですから金色になる資格など、そもそもあるはずがなかったのです。
わたしは鎖を首から外し、あなたを力いっぱい床に投げつけました。硝子は割れ、そこらじゅうに細かな砂が散らばりました。ほの暗い部屋に撒かれた小さな星粒は、ひとつひとつが輝きを帯びていて、まるで一瞬にしてそこに星空が生まれたみたいでした。
皮肉な輝きでした。
あなたの前も、そしてその前も――金色でつながってきた時間の鎖。美しいひとたちのつながり。それを、わたしは断ち切ってしまいました。望み通り金色の秘密を手にすることができたはずのわたしには、けれど、それを抱きしめることが許されていないのです。わたしの元にあれば、ばらばらにされてもなお輝き続けている星砂たちは、ゆっくりと腐敗してゆくように色を失ってしまうでしょう。わたしはとても、そのような残酷で哀しい時の流れに耐えることはできません。
ですから、こうするしかなかったのです。わたしには、こうすることしかできなかったのです。どうしてあなたはわたしに、あなた自身を託したのでしょう。どうして律儀にも、約束を守ってくれたのでしょう。それを知るすべはもうありません。あなたはわたしが、叩き割ってしまったのですから。自ら、壊してしまったのですから。
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