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「見て、見て。このドレス、素敵でしょう? 空と同じ、澄み切った水色よ。それに、たっぷりとした贅沢なフリル。袖はもちろん、パフスリーブなの!」 妹が身に着けていたのは、プリンセスに変身できるという謳い文句のついた子ども向けのおもちゃドレスでした。それは安っぽいサテンの生地でできた、絵本に出て来るアリスの服を模した代物で、お世辞にも素敵とは言いがたいものでしたが、妹はそれをたいへん気に入っていたようで、自慢そうに見せるのでした。妹がくるくると身体を回転させるたび、しゃらしゃらと衣擦れの音をたてながらドレスも回りました。 「あなたはドレスを着ないのね、ベッキー。いつもそんなに地味なお洋服を着ていて、つまらなくはないの? わたしのを貸してあげましょうか?」 妹にとってのわたしは姉ではなく、ともに狂ったお茶会に興じる友人であったようです。アリスと同様に、不思議の国に迷い込んでしまった永遠の少女。 おねえちゃんと呼ぶ代わりに、妹はわたしを「ダイアナ」「ベッキー」など、彼女が好んでいた無垢で美しい少女たちの物語に登場する、主人公の友人の愛称で呼びました。わたしが彼女たちのような少女に特有の形容しがたいきらめきを持ちあわせているかどうかなどということは、妹にとってさほど問題ではなかったようです。 だって、ごっこ遊びのようなものだったのですから。     
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