第1問 幼なじみには何が足りないのか

3/5
前へ
/8ページ
次へ
「あっ!しずく!」 俺は、桐沢が走っていく方向に立っているしずくを見つけ、声をかけた。 だが、様子がおかしい。 「しずく?」 近づいて、名を呼んでみる。 「あっ。こう。」 なんだか泣きそうな顔の幼馴染に思わず抱きしめた。 ぎゅっ。 「しずく、なんかあった?俺に言ってみ」 「な、なんにもないよ」 明らかに嘘だとわかるので、もう一度聞いた。 その時、 「あー、いた!」 見知らぬ男。 悪評の多い高校の制服を着た男子が、しずくを見て、声をかけた。 「走っていなくなるなんて、ずりーじゃん!ちゃんと次約束してからバイバイしなきゃね」 この男には、俺が見えていないのだろうか。 「あなた、さっきの…」 「知り合いなの?しずく」 「えっと…」 「俺は、しずくちゃんの彼氏候補の阿久田翔平。おたくは?」 「……。」 なんだ、コイツ。 「ご、ごめんなさい!私、あなたのこと好きじゃないの。だから、もうやめて」 しずくは、はっきりと答えた。 「そりゃ、あんな短い時間で好きになってもらえないの分かってんよ!だから、時間ちょーだい!」 阿久津は、しずくに頼んだ。 しずくの答えを聞くより先に俺はしずくの腕を引っ張り、その場を離れた。 遠くで、阿久津が何かを叫んでいたが、聞き取れなかった。 「ちょっ、こう!痛いってば!」 「あっ、わりぃ。…つうか誰?あいつ」 「…今日、友達に無理矢理連れて行かれた場所にいた男の子。名前もさっき知った」 「ふーん」 なんだよ、行かないって言ってたのに。 「それより、さっき一緒にいた女の子、誰なの?」 「えっ?…あー、桐沢?男バスのマネージャーだよ。買い出しに行くって言ってたから、たまたま会っただけ。」 「ふーん」 面白くなさそうな顔のしずく。 「なぁ、しずく。もう行くなよ?あーゆー軽い男、何してくるか分かんねーから」 「心配してくれてるの?こう」 あー、やっぱ可愛い。 「当たり前だろ!幼馴染なんだから」 そして、ヘタレな俺。 幼馴染だからじゃない。 俺は、しずくのことが好きなんだ。 「…幼馴染。そぉだよね」 その後、会話もなく家に着いて帰宅した。 しずく、なんか元気なかったなぁ。 それにあの男、気になるなぁ。 コンコン。 「こう、入るよ?」 「兄貴。何?」 「これ、渡しておこうと思って。」 3つ上の兄貴、柴崎そう。現役プロサッカー選手なのだ。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加