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side しずく
「はぁー」
さっきから何度目かのため息。
こうとバイバイしてから、私は1人公園にいた。
「幼馴染…か」
こうに言われた言葉が頭の中で何度も繰り返される。
私は、ただの幼馴染。
分かってる、分かってるけど、あんな風に心配してくれちゃうと期待してしまう。
「あれ?しずくちゃん?」
「あっ、そうさん!」
「久しぶり、何?1人?こうは?」
「あっ、えっとー、1人です」
「…しずくちゃん、お兄さんが話聞いてあげるよ?」
「えっ?でも、そうさん、疲れてるんじゃないですか」
「可愛い妹が、浮かない顔してたら心配するの当たり前じゃん?」
「そうさん…。」
私は、そうさんに正直に話をした。
こうの事が好きなこと。
今の関係を壊したくないこと。
でも、今のままはモヤモヤすること。
「そっかー、俺てっきり2人は付き合ってると思ってたんだけど、まだだったんだ」
「えっ?」
「あー、ごめん。勝手な想像です。こうの気持ちは、こうにしか分からないから、俺が言えることは、1つだけ。しずくちゃんの正直な気持ちを伝えて壊れちゃうような薄っぺらい関係じゃないってこと。」
「そうさん…それ、適当過ぎませんか」
「あれ?信じない?俺のカン、当たるんだよ?」
「こうも、しずくちゃんのこと大事に思ってるのは確かだし、もっと自信持ってみなよ。幼馴染なんてポジション、ポイント高いじゃん」
そうさん、頭の中サッカー仕様だな。
でも
「ありがとうございます!なんだか元気出ました。私、こうに気持ち伝えられるように頑張ります」
「ねー、その手伝いしてあげよっか」
そうさんの顔が、満面の笑顔で圧をかけてきた。
「そうさん?それってどーゆー?」
「決まってるじゃん、デートするんだよ」
「は?」
デート?こうと私が?
「俺、いいもん持ってるんだよ。こうに渡しておくから。しずくちゃんにも、はい」
手渡されたチケットは、遊園地のものだった。
「俺、試合続きで行けないし、良かったら行ってきなよ。こうと」
「…ありがとうございます。でも、こう私と行ってくれるかな」
「大丈夫!お兄ちゃんに任せなさい」
かっこいい兄弟の幼馴染で良かったと私は心底思った。
「そうさん、私がんばります!」
「…しずくちゃん。いつのまにか女子高生になっちゃったんだなぁ。なんだか寂しい。けど、嬉しいよ」
そう言って、私の頭にポンと手を置いた。
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