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 雨が降りしきる中、俺はたどり着いたその場で立ち往生した。雨宿りに入ったその廃墟の中には先客が居て、その男は、まあ一先ず拭けよ、と言ってタオルを差し出してきた。タオルを受け取るとそれは未使用なのか乾いており、柔軟剤のほのかな香りがした。  男はどこから来たのだろうか。いつからここに居るのだろうか。 辺りを見渡せばその男が着ているつなぎの作業服と同じく泥に汚れた軍手やシャベルが転がっている。 「……何か、作業していたんですか」 「あんたは?」  人にものを聞く時は自分から、という当たり前の事を思い出した。正直、容易に人に話せる様なことはしてなかったのだが、初対面のしかもこんな森の中で出会った相手に話したところで今後何も支障はない、雨が上がれば何事もなかったかの様に乾いた空気に戻ると思えた。むしろ、今この相手にしか言えない懺悔なのかもしれない。 「人殺しに、なるかもしれない」 「まだ、死んでないのか?」 「ああ、薬を飲ませて森の中に置いてきた。この天気だ、気温もだいぶ下がっている」 「どうして」 「怖くなったんだ、あの女が……」     
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