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「こうすれば機動時にかかるGがプラスになります。人間も機体もプラスなら6Gでも7Gでも耐えられますが、マイナスだと人間は2Gくらいが限界ですからね。でも、後ろから見ていれば、背面になった時点で前の機体がスプリットSを打つのが容易に予測できます。ところが……無人機なら、原理的にはいくらでもマイナスGに耐えられますから、機体を背面にせずいきなりスプリットSに入ることもできるんです。これ、目の前でやられたら、なんの前触れもなく突然消えたように見えますよ。おそらくマリーンズはこれにやられたんじゃないですかね」
「なるほどな。だから連中は近づこうとしないのか」
「そうだと思います。だけど……ミサイルは効かないし、ガン攻撃するなら近づかないといけない。だけど近づいたらマイナスG機動で逃げられる。だからあんな風に手詰まり状態が続いているんです。でも、連中もちゃんと考えてます。敵機がこちらに来ないように上手く牽制していますよ。さすがですね」
「そうなのか……ん?」
天田二尉が見上げた方向に小林一曹も視線を移す。X-47Bがいきなり急加速して、一機のF-16に真っ直ぐ向かっていた。
「やばい!あれ、体当たりするんじゃないのか?」天田二尉が目を丸くしながら言う。
"そんな、バカな……"
小林一曹にはとてもそうは思えなかった。原発を攻撃するというミッションを遂行しようとしている敵が、F-16たった一機を道連れにするだけで終わる、なんてことがあるだろうか。
結果は彼の思惑通りだった、X-47BはF-16の鼻先をかすめて飛び去っていった。
「ふう……びびらせやがって……」天田二尉は小さくため息をつく。
しかし。
「いや……待ってください。様子がおかしい」
「え?」
小林一曹の声に、天田二尉は再び空を見上げる。
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