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X-47Bに狙われたF-16の排気ノズルから、黒煙が吐き出されていた。そして、機首が下がると同時にキャノピーが吹き飛び、パイロットが脱出する。
「嘘だろ……」天田二尉の声が上ずる。「撃たれたのか?」
「いや……違いますね。F-16がサージングを起こしたんです」
「サージング?エンジントラブルか?」
「そうです。エンジンに空気が入らなくてタービンが空回りして、ついに壊れたんですよ。敵はわざとF-16の目の前を高速で横切ることで、そのエンジン手前の気流を乱したんです。ジェットウォッシュ(後方気流)も浴びせたかもしれませんね。それで、あのパイロットはまんまとその罠に引っかかってサージングを起こしてしまった。すごい……あんなことまでできるなんて……」
「ちょっと待て。ということは、F-16の包囲網に、一つ穴が開いた、ってことだよな?」
「!」
その天田二尉の言葉は、非常に重要な事実を意味していた。小林一曹は慄然とする。
とうとう、彼らの前の壁が、全て突破されたのだ。
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