スカイシューターの矜持

14/17
前へ
/18ページ
次へ
X-47Bに狙われたF-16の排気ノズルから、黒煙が吐き出されていた。そして、機首が下がると同時にキャノピーが吹き飛び、パイロットが脱出する。 「嘘だろ……」天田二尉の声が上ずる。「撃たれたのか?」 「いや……違いますね。F-16がサージングを起こしたんです」 「サージング?エンジントラブルか?」 「そうです。エンジンに空気が入らなくてタービンが空回りして、ついに壊れたんですよ。敵はわざとF-16の目の前を高速で横切ることで、そのエンジン手前の気流を乱したんです。ジェットウォッシュ(後方気流)も浴びせたかもしれませんね。それで、あのパイロットはまんまとその罠に引っかかってサージングを起こしてしまった。すごい……あんなことまでできるなんて……」 「ちょっと待て。ということは、F-16の包囲網に、一つ穴が開いた、ってことだよな?」 「!」 その天田二尉の言葉は、非常に重要な事実を意味していた。小林一曹は慄然とする。 とうとう、彼らの前の壁が、全て突破されたのだ。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加