スカイシューターの矜持

8/17
前へ
/18ページ
次へ
"ったく、何で俺たちがアメリカの尻ぬぐいをせにゃならんのだ……" 87式自走高射機関砲(87AW)、通称「スカイシューター」96-5112号車の砲手席で、小林史郎一等陸曹は、本日何度となく心の中で繰り返した愚痴を今一度脳裏に蘇らせる。 もっとも、その疑問の答えは彼の中でも既に出ていた。米軍は地対空ミサイルだけで十分と考え、87AWのような対空自走砲は作っていないのだ。だから最後の砦として、自衛隊の部隊の中で唯一、陸自高射教導隊の彼らが今回出動を要請されたのだった。全く、迷惑きわまりない話だ。小林一曹は心底米軍を呪った。 87AWは、74式戦車の砲塔の代わりにスイスのエリコン社製35ミリ対空機関砲KDAを2門載せたような形をしている。彼以外の乗員は、高射教導隊第3高射中隊長であり車長でもある天田隼人二尉と、操縦手の甲斐隆司三曹の2名だった。「もんじゅ」周辺には5112号車を含め3台の87AWが配備されていた。 「しかし、ヤツは何でわざわざこんな明るい時間に来るのかな。ステルスなんだから夜来ればこっちはどうしようもねえだろ」 そう言って、天田二尉が隣に並んでいる彼を振り返る。     
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加