スカイシューターの矜持

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「そりゃ向こうだって夜は飛びにくいからですよ」小林一曹は応える。「昼なら太陽とか地形とかを見て地文(ちもん)航法で飛べますが、夜はGPSや電波標識に頼るしかない。だけどGPSはジャミングできるし電波標識は止められる。現に今そうなってるでしょ?」 「いや、夜でも暗視装置(スターライト・スコープ)使えば明るく見えるだろ?」 「スターライト・スコープは高速で動くものは全然見えませんよ。飛行機の目として使うには厳しいと思います」 「……なるほど。さすが防大出は違うね」 「東工大の隊長に言われたくないです」 「けっ。俺はどうせ中退だからな……おっと」 天田二尉は右手で右耳のヘッドフォンを押さえる。何か通信が入ったようだ。 「……海兵隊(マリーンズ)が要撃失敗したそうだ。第一の壁が突破されたな」 「!」 車内に一気に緊張がみなぎる。 「さあ、次は第二の壁だ」 天井のハッチを開け、天田二尉と小林一曹は立ち上がり、若狭湾上空を見上げる。 「……いました!11時の方向!」視力2.0オーバーの小林一曹が叫び、目標を指さす。 「!」天田二尉が双眼鏡を両目の前に構え、小林一曹が指さす方向にそれを向ける。 「もんじゅ」手前の海岸線にずらりと並んでいる、第二の壁……米軍の中距離地対空ミサイル、ホークが次々に頭をもたげ、轟音と共に発射されていく。 「当たるかな?」と、天田二尉。     
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