第一章 目覚め

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第一章 目覚め

 体中が痛い。  軋むような痛みで目が覚めた。指を動かしてみる。それだけでも、ビリビリと痺れる。足も少し持ち上げてみた。 「っ……ぃ……て」  声を出そうと思えば、掠れていた。  体が動かないならば、頭を動かすことにした。  まずは、自分の名前だ。 (俺は……鈴木一穂)  一穂は安心した。自分の名前が分かれば、大丈夫な気がした。  次は、ここはどこか、と考えた。  目は見える。視界には、黄土色の天井だろうか、見えている。  ここは、病院か。いや、だとしたら、臭いが違う。大きく息を吸ってみた。土の香りがしている。  では、ここはどこだろう?  首は少しだけ動いた。傾けてみる。 「……な、んだ、ここ……?」  一穂は、目を見開いた。  ここは病院ではない。  そして、日本でもない。  小麦色の肌の少女と目が合った。
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