第一章 目覚め

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 目の前の景色は現実なのか。 「どこまでも、……荒野だな。ま、荒野の国だからそうか」  国名を口にしても、まだ現実味がない。  だが、目の前に広がる光景と体に当たる埃っぽい風は、一穂に現実だと突き付けてくる。  荒野の国エリミヤは、ごつごつとした岩と砂漠に囲まれ、土壁の家々が僅かな緑の間に密集する地だった。  さらに、ここは国の首都イーリアというらしい。  一穂は肩を落とした。  傷が癒えた頃には、ひと月経っていた。  最初は、毎日どうすれば帰れるのかと不安と恐怖に耐えていた。変なテロリストに拉致されたのかも、と。  だが、自分を拉致しても相手に得は全くない。国家の秘密を握るようなこともなければ、国を担う経済活動をしているわけでもない。よくテレビで見るように、紛争の地域に足を運び、現状を伝えるジャーナリストでもない。  その日の仕事に追われ、将来の自分はどうなっているのだろうと時折思うただの日本人だ。  それでも、国相手の莫大な身代金目当てならばどうしようもないだろうが、一穂はあの日―― (あの日……そうだ、上司の赤井さんと飲んで帰る途中……)  と、背後で人の気配がした。
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