第一章 目覚め

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 一穂は、唖然としていた。  人々は逃げ惑い、街の屈強な兵士達が各々定位置についていた。 「カズホ! あなたも早く家の中へ!」 「でっ、でも……あんなのが襲ってきたら、一溜りもない……!」 「倒すことはできなくても、……せめて、退けるくらいは」  表向きは街の酒場の踊り子をしているミーシャ。だが、本当の姿は街を守るための傭兵だ。  ミーシャの体の周りに、縁色の渦が見えた。それは、束の間鳥の形を成して、少女の周りを再び守る渦の壁となった。 「いくよ、タクシィ・アエトス」  ミーシャがそっと呟く。  この世界には、魔法がある。縁は風の力だという。他の力もあるみたいだが、一穂はまだ教えてもらっていなかった。  ミーシャの家系は、先祖代々風使いだという。  華奢な少女が、と一穂は思ったが、ここ数日彼女の腕前を見ていた。ドラゴン相手ではなかったが、街を狙う、これもまた一穂が見たことのない怪物を退けていた。  怪物は、夜に向かうにつれ、活動を開始するようだった。  今、陽は西に沈みかけていた。どこの国でも、世界でも、太陽と月は変わらない。  夕陽を浴びるドラゴンは、さらに赤く、神秘と神気を纏っているように見えた。
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