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春になり、新社会人になったあたし達。
お互い、慣れない会社勤めだったが、励ましあって春は過ごし、夏はイベントによく足を運ばせ、秋には二人で暮らすことにした。
何度も来たことのある彼の部屋。
ここで二人暮らしをするのか、と心を躍らせていた。
彼もあたしが、タバコが嫌いなのを気にしてか、ベランダでよく吸いには出て、霧吹きで少し全体にかけてから部屋に戻る。あたしはその様子をコーヒーをすすりながら横目で見ていた。
そう、あたしはコーヒーをよく飲む。
特に社会人になってからは飲む量が増えた。
学生時代ではレポートを徹夜で作成していて、夜になっても飲み、今では時間帯は気にせずに飲みたい時には飲んでいる。
最初は大人の味だと、思っていた飲み物。眠らないように、という気持ちがいつの間にかちょっとした息抜きになり、今では、中毒のようになっていた。
歯に着いた取れない汚れがいかにあたしが飲んでいるかの証拠だった。
そういえば、彼からのキスが減ったのも、キスをしてもすぐに横をむくのも照れ隠しではなかったのかもしれない。
夜に、あたしが恥ずかしいから顔が見えない体勢が良いとお願いしても文句を言わないのは、あたしのコーヒー中毒のせいでもあったんだ…
あたしはベランダに行き、彼は慌ててタバコの火を消して驚いた顔をした彼に抱き着いた。
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