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谷底の花
「ここにゃ」
急勾配の坂を3時間ほど登ったところに小さな滝がある。滝の後ろを通り反対側にでると、ゴツゴツした岩場が現れる。その辺りから幻の花がポツポツと点在し、20メートル位下の谷底に咲いている。
花のすぐ近く水でできた大きな壁が、ピアジェ達の立っているところを越え、更に10メートル位延びている。
「思った以上にすごいな」
言った上官はもちろん、あまりの高さに全員が空をみあげた。
谷からみる空は、いつもより高く感じられ、こんな状況でいうのは不謹慎だと思うけど綺麗だ。雲1つなくオレンジから赤へと淡いグラデーションを描いている。
水の壁にあたった夕焼けの光が、屈折しながらキラキラと輝いている。
「綺麗だ」
思わずでた言葉をごまかすように、俺は言葉を続けた。
「寒くなってきましたね」
水のマナが異様に濃いここは、周りの温度に比べて5℃くらいは低い。
「メイちゃんは、この中にいる。弱いけどマナを感じるにゃん」
ここに来る前より、はっきりと言いきるピアジェに疑問をぶつける。
「メイちゃんは生きてるってこと?」
「……わからないにゃ。ノアノアの投げたピアス、増幅の作用の可能性も否定できにゃい」
「増幅されたメイちゃんのマナを感じているかもしれないってことなのか?」
「そうにゃ、メイちゃん自身も水の力が1番強いにゃ」
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