ぐいぐい 1

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「チーム長…さっきの話を聞いてたんですか?」 「たまたまな」 「でも、千葉さんの言ってたのが、どうして私だと思うんですか?」 会社では、徹を千葉さんと呼んでいた。交際している事も公にはしていない。 だが、目黒は冷ややかな視線を翼に向けた。 「千葉とおまえが付き合ってるのは、周知の事実だからな」 「あっ…ば、バレてたんでしょうか?」 「バレてたかだと?お前たちが付き合いを隠してたことの方が初耳だ」 隠すつもりはなかったが、全然、隠せていなかったんだと知ると、なんだか少し恥ずかしかった。 「……」 徹と付き合っていたのが既にバレていたのなら、もう言うべき弁明の言葉は見当たらない。 目黒から目を逸らし、足を引きずって翼は目黒から一歩離れた。 静けさの中に自販機のモーター音が響いていた。 「……お前さ、もう、やめとけば?」 そんな中、目黒が突然発した言葉に翼は目を見開いていた。 「な、なんですか? 何をやめとけって」 「結婚するのをだよ。千葉との結婚なんてやめとけばって言ったんだ」 滑舌が良すぎる。 静かな廊下に良く通る声だった。 だから、聞き直すことが不可能に思えて、翼はじっと目黒を見つめた。
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