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「チーム長…さっきの話を聞いてたんですか?」
「たまたまな」
「でも、千葉さんの言ってたのが、どうして私だと思うんですか?」
会社では、徹を千葉さんと呼んでいた。交際している事も公にはしていない。
だが、目黒は冷ややかな視線を翼に向けた。
「千葉とおまえが付き合ってるのは、周知の事実だからな」
「あっ…ば、バレてたんでしょうか?」
「バレてたかだと?お前たちが付き合いを隠してたことの方が初耳だ」
隠すつもりはなかったが、全然、隠せていなかったんだと知ると、なんだか少し恥ずかしかった。
「……」
徹と付き合っていたのが既にバレていたのなら、もう言うべき弁明の言葉は見当たらない。
目黒から目を逸らし、足を引きずって翼は目黒から一歩離れた。
静けさの中に自販機のモーター音が響いていた。
「……お前さ、もう、やめとけば?」
そんな中、目黒が突然発した言葉に翼は目を見開いていた。
「な、なんですか? 何をやめとけって」
「結婚するのをだよ。千葉との結婚なんてやめとけばって言ったんだ」
滑舌が良すぎる。
静かな廊下に良く通る声だった。
だから、聞き直すことが不可能に思えて、翼はじっと目黒を見つめた。
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