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「ひっ!」
足が痺れたとはいえ、目黒に肩を抱かれ体を密着させている自分の状態に今更ながら驚く翼。
「どうかしたのか」
「体がっ…あの、もう大丈夫なんで」
前に進み出て目黒から離れようとする翼の肩を目黒ががっちりと掴む。
「じきに一階だ。それまで倒れないように…」
言葉を切り、目黒は翼を見下ろした。
「俺が直に支えといてやる」
そう言って、目黒はニヤリと意味深な笑みを浮かべる。
な、なんだろう、チーム長のこの不穏な笑顔。
何かを企んでそうな目黒の笑顔に少しばかり寒気を感じて身を固くする翼。
エレベーターが一階へ着く頃には、ようやく翼の足も痺れがなくなっていた。
「ありがとうございました。あの、バッグを」
目黒に持って貰っていたバッグを受け取ろうと翼が手を伸ばす。だか、目黒にその手首をがっしり掴まれてしまう。
「なんで?」
「ついてこい」
スタスタと歩く目黒に無理矢理ぎみに連れられて翼は会社を出る。
会社を出てすぐの大通りを見ると黒塗りの大きな高級車が停車していた。
目黒が近づくと運転手がさっと降りてきて後部座席のドアを開ける。
「さ、乗れ」
「どうしてですか?あのどうしてチーム長の車に私が乗るんですか?」
「車に乗るのにもいちいち理由が必要なのか?全く面倒な奴だな。よし、わかった。簡潔に答えてやる。今から買い物へ行く。おまえを安上がりな女から高級な女に変えてやる為の買い物だ」
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