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「え?安上がりな女だからいいって?なんで」
熊本が不思議そうに千葉を見る。
話の内容を聞くにつれて、2人から見えない場所へ足音をさせないようにして翼は身を隠す。
「浪費するような女じゃ結婚したら男が苦労するだろ。結局、結婚って男が楽するためにするもんだからな」
悪怯れた様子もなく、偉そうに語る千葉。
「そうか?」
「結婚してから自由がなくなったなんて良く聞くだろ? 結婚生活を謳歌できるかどうかは、相手の女次第なんだ。俺は結婚後も自由に遊ぶよ。そのために選んだ女なんだから」
「お前も言うねーははははっ」
2人の男のバカに明るい笑い声が、やってきたエレベーターの中に吸い込まれてやがて聞こえなくなった。
バッグを胸に抱き冷たい大理石の柱に背をつけていた翼は、2人の声が聞こえなくなってもジッとその場に立ち尽くしていた。
少しして、全身から力を失くした翼。
柱に背中をつけたまま、ズルズルと下がっていき、ついには、冷たい床にしゃがみこんでしまっていた。
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