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徹が『好きだよ』と言ってくれる。
それだけで、ちっぽけな自分の存在価値が認められた気がして翼は結婚を快諾したのだ。
結婚をする相手がいるだけで自分はめぐまれている、幸せなんだ。そう思ったからだ。
だが、これはどうしたことだろう。
どうしたって胸が痛む。
エレベーターホールで徹が熊本に安上がりな女と話していたのは、恐らく翼のことだ。
高級レストランも指輪も要らない安上がりな女、そんな意味だ。
結構な時間、へんなふうに座り込んでいた為に翼の足は痺れてきていた。
立ち上がったら、たいそうな酔っ払いみたいによろけてしまいそうだ。
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