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バッグを床に置き両手を床についてから膝も床につけた。
翼がまるで四つん這いみたいな状態になっていた時、頭上から声がふってきた。
「おーおー、今から雑巾がけでもするのか?山梨。ご苦労様」
名前まで呼ばれて顔を上げると、そこには見知った男の姿があった。
「チーム長! こ、コレは、あの…す、ヨガですよ、ホットヨガ。流行ってるんですよ知らないんですか?」
「は? 夜の会社でヨガなんかするな。第一、ホットヨガとは暑いところでやるもんだ。こんな冷えた廊下でするもんじゃない。知らないのはお前だろが」
相変わらず口の減らない男に翼はムッとしていた。
この男は、日本酒業界で有名な株式会社トントリーホールディングスの会長の孫で、翼の所属する広域営業促進部の若きチーム長でもある目黒 斗真だ。
「ヨガはいいから、とっとと帰れ」
目黒は立たせようとして無理に翼の腕を引っ張りあげた。
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