Prologo:開店前の一時

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Prologo:開店前の一時

とある場所にある1件のお店「Escena Revuelta」… 英語では「Scramble Scene」と言う。 ここは様々な人々が出逢う場所になっている。 24時間、年中無休で開いているこの店の若きマスターであり、 スペイン人と日本人のハーフの『(ゆう)』は開店準備をしていた。 手挽きのコーヒーミルで豆を挽き、サイフォン式のコーヒーメーカーに入れる。 オーブンからは香ばしい匂いがする。 紅玉を使ったアップルパイが出来たようだ。 カウンターの奥にはBARと同じようにたくさんのお酒が並んでいる。 店の一角にはスペイン語で書かれた文章が貼られていた。 『Esta tienda acepta cualquier persona. Incluso si es un pecador o un corazon roto… Como mirar las flores. Miremos a todos los que vinieron con gusto.』 (この店はどんな人でも受け入れます。 それが罪人であっても、失恋した人であっても… 花を見守る太陽の様にここに来た人全てを暖かく迎え入れましょう) この言葉は、スペイン人である優の祖父の代から掲げている。 この店に来る人はどんな理由があるにせよ「平等」なのだ。 「Abuelo, me pregunto quien se reunira con quien… hoy…」 (おじいちゃん、今日は誰と誰が巡り逢うんだろうね…) カウンターでグラスを磨き、ドアの外を見つめながら優しく微笑んで呟いた。
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