Capitulo 1:『Pastel de manzana《アップルパイ》』

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Capitulo 1:『Pastel de manzana《アップルパイ》』

開店準備から2時間後、ドアにつけられたベルが鳴った。 「いらっしゃいませ。おや『来人(らいと)』、久しぶりだね」 「こんにちは。優君も元気そうで何よりです」 「来人」と呼ばれた男性は銀色の髪に蒼い瞳の持ち主。 「Pousse-Cafe」というBARでBartenderをしている。 「優君、何か変わった事はありませんでしたか?」 「特にはないかなぁ…でも何でそんな事を聞くの?」 「僕はそんなに外に出ないから。買い物は兄さんに任せっきりだし」 「そう言えば来人はインドア派だもんね」 「外には出ようと思うんだけど、なかなかそれも出来なくて。ところで今日のお勧めは?」 「今日は紅玉を使った『Pastel de manzana(アップルパイ)』。飲み物は紅茶だと『ダージリン セカンドフラッシュ』、コーヒーだと『キリマンジャロ』が合うかな」 「流石は優君、フードペアリングがばっちり。じゃあ、アップルパイとキリマンジャロのセットで」 「わかりました。今用意しますね」 そう言うとサイフォンに火を入れ、コーヒーを淹れ始める。 コーヒーのいい香りとサイフォンの音が室内に広がっていく。 それを見ながら来人は頬杖をついている。 「やっぱりここは落ち着くね。時間の流れがゆっくりだもの」 「来人の所は時間の干渉を受けないからなぁ。でも僕はあのBAR、大好きだよ」 「ありがとう。そう言ってくれる人少なくってね。 って言うか家の店に来てくれた客でこの店に来た人ってまだいないよね?」 「もし来たら、その時は教えようか?」 「いや、それは無粋な真似になるからいいよ。でも…凛音には来てほしいかな?」 「凛音…?それって来人のお客さん?」 「うん…彼女は「選ばれた人」だからね。『鍵』も持ってるよ」 「あの『鍵』か…きっと良い景色が見えたんだろうなぁ。 ところでアップルパイにアイスは付ける?」 「あ、それおいしそう!お願いしてもいい?」 「分かりました。じゃあ暖かいアップルパイにバニラアイスを添えましょう」 そう言っている間にコーヒーが出来上がる。優は慣れた手つきでコーヒーをカップに入れ、 アップルパイにバニラアイスを添えて来人の前に出した。 「お待たせしました。アップルパイのバニラアイス添えとキリマンジャロです」 「優君の作るデザートもコーヒーも美味しいからね。いただきます」
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