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真正・超科学館
まだ昼の一時を少し回った時刻だというのに、もう閉館しているのか、中は薄暗い。ドアの案内を見ると、開館時間内のはずだ。奥に電飾の矢印がある。やはりちゃちなもので、見るからに手作り。しかし、クリスマスの装飾のために相談してみようか、と思えるほどスッキリと整理された状態になっている。まずは矢印が差すドアを開けようと思ったが、ドアの手前の床に、何故かふかふかのマットが置かれている。私はそれを踏まないように避けながらドアに近づき、ドアノブに手をかけ、回転させた。するとその瞬間、爆音と共に閃光を浴び、驚いて床のマットの上に尻餅をついてしまった。少し遅れて勢いよく出て来た煙に更に驚いていると、両手で煙を掻き分けながら、老人が現れた。一目で老人と分かる、胸まで伸びた白髭、禿げ上がった頭。その男は大声で笑いながら、
「真正・超科学館へようこそ~。」
呆気にとられていると、老人は私に手を差しのべて来た。
「ご冗談を。その右手も仕掛けでしょう。」
私が言うと、
「バレましたか?」
と言って老人は右手を引き抜いた。
「え!義手なんですか?」と結局驚いていると、
「ほら、この通り。」
隠していた右手を出しながら、
「ご存知だったのではないのですか?」
私はマットの意味がようやく分かり、起き上がりながら答えた。
「いえいえ、私はてっきり、手を握ると、失礼ながら、ご老人なので、倒れ掛かって来るものと思いまして」
老人は手を打ち(勿論、左手と生えてきた右手を打ち)、
「なるほど!それも面白うございますな。しかし、そのアイデアには覚えがあるような……」
どこまでも可笑しな人だと思いながら、怒る気にもなれず、彼の案内する方へと進んだ。
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