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投獄
ロータリーにパトカーが入って来た。やることもない私は成りゆきをじっと見ている。降りた警官はこちらに向かっている。
「俺か……、いかん、」と気づいた時には職務質問。真実を言えるはずもなく、不信人物として連行されるのである。
財布の中身は未来の印刷ばかり。真実はただの嘘っぱちになり、高度な印刷技術には厳しい取り調べ。結局、偽札犯は投獄され、長い月日が過ぎることになった。
私の存在はなく、本物はただ煮え切らずに彼女の後ろを歩くだけ。結局は偽者も同じく30年の時を遡って来たあげく、やはり煮え切らず。
私はずぶ濡れで、あの超科学館の前に立っている。自分を無くした過去からどうやって抜け出して来たのかはっきり覚えていない。ただ、過去で長く投獄された後、移送中に隙を見て逃亡したのは間違いない。ただあの老人に会いたいと願っている。現在と過去の時間は同じ速さで流れているようだ。あれは2年前の今日だった。過去にいた時間が長過ぎたのだろう。私の家は既に売家になっていた。
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