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夏、僕は疲れていた。
プロジェクトチームに配属されて、三年ほど支社で仕事をした後、本社に戻されて二ヶ月経っていた。
英司が八月に一週間休む、というので、うらやましい、とメッセージを送ると、
-二泊か、無理なら一泊でも、どこか行きませんか?
と返事が来た。
-今から予約とか無理なのでは
-ゴルフ用の家があるので、そこでよければ。
ゴルフ用の家って何だよ、と返信できないうちに電車が停まって、スマホを胸のポケットに入れた。ホームから改札に下るエスカレーターに乗って、僕はため息をついた。右側を歩いて下りていく女性が、ちらっと見返る素振りを見せた。大きなため息だったのだろう。
新しい部署の仕事に慣れなくて、ますます寝つきが悪くなり、朝は辛かった。
英司は、眠れないなら薬で寝てもいいじゃないかと言うが、薬をやめてもう随分経っていて、気が進まなかった。
昼休みに、コンビニエンスストアのレジ待ちの間にスマホを見ると、英司からメッセージが入っていた。
-親戚がよく使うゴルフ場の近くに家がある。古くて小さいけど海が見える。ゴルフ場以外特に何もないけど、魚は美味い。ゴルフやる?
-ゴルフやるわけない
-潮干狩りもできる。
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