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私はかすかに不快になってつっけんどんに言った。
「といいますと」
「ある月命日のこと、私が悪いのですが帝が開かれた枕草子をそのままにしてしまいました」
「まさかそれを」
「ええ。中宮さまが帝の昼の御座所にお越しになり、ご覧に」
私は頭を抱えてしまった。本当にあくまで内輪受けの話なのだ。
「物づくしのところでございましょ?」
私は藁にもすがる思いで言うと、首を振られた。
「行成に寝顔を見られたあの話」
小廂の間でうたた寝をしていたら、帝と中宮さまが突然お出ましになって私があたふたした話だ。お二人は私たちの陰に隠れてずっと楽しそうに様子をご覧になり、頭の弁として行成の君はその背後に控えておられ、ずっと私の寝顔も寝起きの顔も見られた。
「仲睦まじい様子をお読みになられたら、さぞ衝撃を受けられたことでしょう」
「そんなことはありません。事前に大臣が手を打っていたのが功を奏しました。為時の娘を覚えておられますか。あなたがボロクソに書いた宣孝の側室で夫を亡くして、雨の夜に女の品評をやる話を書いて話題になって、お見せしたことがあると思うのですが」
「中将が実方の君、源氏があなただと言う噂があるのだと、笑いながら持ってこられたあの話ですか?」
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