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「私が都を出る前ですが、京極の地で流行っていると聞きまして。人に頼んで取り寄せたのですが、なんとか自分でも作れそうだと思ったの」
そう言って、炭火で餅をあぶって、夫と娘にあぶり餅を作ってやった。
「母さまはなんでもお出来になるね」
夫は娘に私のことをべた褒めにする。娘は嬉しそうに、前歯の抜けた顔で笑った。
そろそろ、字の練習でもさせよう。
あの、公任の君の文にあった、三十六歌仙。これは実方の君の遺児のためだったんだな、と今更気づいた。
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