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確かに、私には選択肢はいくらでもあった。私の妊娠がわかったとき、一番はじめに「私の子にしますか」と言ってくれたのは、この経房の君だった。
「私は、清少納言の君の臨機応変の才能を愛し、同時に激しく嫉妬していますから選ばれない。では、一部ご不快な点があるかもしれませんが、許されよ」
夫が笑って、経房の君は私に向き直った。
「どうか枕草子の続きをお書きくださいませ」
あれは、内輪の楽しみのものだし、読んでほしい方はこの世におられない。
「帝は皇后さまの月命日には必ず枕草子を開かれます」
光栄なことだが、もはや遠いことだ。
「中宮さまはまだ幼いと、帝は昼間にだけお通いになる。ただ、ゆっくりとその距離は縮んでいるようですが、今、寵愛が一番深いと思われるのは、御匣殿別当です。母代になられた」
皇后さまの一番下の妹君が、帝の寵愛を得られた!
「大変お美しい方ですから」
「帝には、万事控え目なのが物足りないようですが、それでも声が似ている、仕草が似ていると愛でられる」
「それでは兄君たちは大変な喜びようでしょう」
「ええ。ただご本人は中宮さまにご遠慮がちに過ごされて、怯えるように小さくなさっておられます。中宮さまはというと、ようやく帝を男性として意識し始めたほど幼い。しかし、中宮さまこそかつてのお后さまを彷彿とさせるような賢い方ですね」
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