3 あぶり餅

1/4
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ

3 あぶり餅

 最近、京極で流行りのものがあるという。  新しく疫病を封じるために建てられた、その名も「今宮神社」。その門前に竹串に餅をつけてきな粉をまぶし、焼いて味噌をつけて食べさせる店が評判らしい。  皇后大進の平生昌(たいらのなりまさ)の君の三条の屋敷でそんな話を聞いて、后の宮は食べてみたい、とおっしゃった。  土御門のお方は姫君を入内させ、たまたまだと言うがお后さまが一の宮さまを出産なさったその日に、姫君は中宮宣下を受けられ、お后さまは中宮から皇后にさせられた。でも、宮中にお戻りになったお后さまへの帝の寵愛は変わらず、お后さまは第三子を懐妊中なのがご兄弟の頼みの綱だ。  ご両親を亡くされたお后さまは、頼りにすべき兄君もまだ復位なされていない中で、昨年に引き続き、生昌の君の屋敷で出産に臨まれる。  その心細さは想像にあまりある。  私はお后さまのお心を晴らしたくて、興味を持たれたこの餅を入手できないかと思うが、女の身ではこの屋敷の外に出るのも簡単な話ではない。 「どうしたんだい、清少納言の君」  経房の君が私の房にお越しになった。     
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!