3.

5/6
1035人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
彼が恋い焦がれてやっと手に入れるこのひとは、射精するのも初めてなのだ。 ならば絶対痛い思いはさせたくない。 初めてで、これはキモチイイことなんだと植え付けたい。 そうしたら、触れ続けることを赦してくれるかもしれない。 だから、優しく丁寧に、念入りにそこを解していく。 もちろん、一度放出してくたりと力を無くした前も、もう一度熱を持たせるためにそっと手のひらで包み込んだ。 指が体内に入り込む違和感を、前を弄ることで快感とすり替えてしまう。 ひんやりと冷えきっている川嶋の身体の表面と違って、身体の中は熱かった。 そのことが宇賀神を少し安心させる。 まだ大丈夫。 川嶋はちゃんと生きてくれる。 だから、その熱を、指だけじゃなく身体で感じたい。 指を2本に増やす。 「んっ……」 そっと顔を覗き込むと、キツそうな顔をしている。 宇賀神は指をくねらせ、その場所を探している。 そして、その場所をようやく見つけた。 そっと、だけど、確実にそこを擦り上げた。 ビクッと川嶋の背中が反った。 「やっ……」 手のひらの中で再び熱を持ち始めていたそれが、急に重さと熱を増す。 きゅっと瞳を閉じ、思わず腰を浮かせている。 宇賀神は優しく、でも執拗にそこを責めた。 川嶋の意識をそっちに縛り付けて、その間に更に解していく。 指はいつの間にか3本に増えていた。 「宇賀神、も…おかしく、なる…」 「いーんだよ、おかしくなれよ、今だけは何も考えなくていいんだから」 俺のことだけ考えてて? お前のこと気持ちよくしてる、この指のことだけでアタマいっぱいにして? そんなところまで桜色に染めている耳許に囁けば。 「いつも、だよ…」 「え?」 「いつも、おまえのことしか、ない」 だって、そうだろ? 僕にはお前しかいないから。 「…龍、もっと」 中学に上がった頃から、いつの間にか名字で呼ぶようになった川嶋が、久しぶりに懐かしい呼び方をしてくれた。 「もっと、おかしく、して?」 はあ、と熱い吐息とともに、そんなこと言われたら。 もう、繋がりたい。 限界だ。 宇賀神は丁寧に丁寧に解したそこに、限界まで膨れ上がった自身の熱を押し当てた。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!