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「医者になるって言ってなかったか?」 進路希望の用紙に書かれた文字を見て、宇賀神は川嶋に尋ねた。 「うん、でも医学部はお金がかかるし、6年も通わないといけないから」 「そんなもん、親父に頼んでやる」 俺が何とかしてやる、と言えないことに歯噛みしながら、宇賀神は言う。 川嶋のためなら、父親に頭を下げることも、その代わりに何かしなければならないことがあっても構わない。 だけど、川嶋は首を横に振った。 「そういうわけにはいかない。僕は宇賀神会に借りを作りたくない」 お前とずっと対等でいたいから。 ここで借りを作ると、もう医者である限りずっと恩を感じなければいけなくなる。 だから、今回ばかりはどうしても頼りたくない。 真っ直ぐに瞳を合わせてそう言われたら。 宇賀神はそれ以上ごり押しできない。 「お前と一緒に大学に通うのも楽しいだろうから、これでいいんだ」 そう言う川嶋の進路希望用紙には、宇賀神と同じ大学の同じ経済学部、と書かれている。 「アキ」 宇賀神は、愛しいひとの名を呼ぶ。 「今すぐ抱きたい」 耳許に口を寄せ、囁く。 「屋上行くぞ」 川嶋は断らなかった。 授業をサボるような生徒はこの学校にはいない。 だから、授業中の屋上で、好き放題川嶋にあられもない格好をさせて、自身の欲望をその身体に埋める。 「ん……龍、そこ、やだ…」 背中を仰け反らせ、川嶋が甘い声で鳴く。 「やじゃねぇだろ、イイって言えよ」 グッと同じ場所を突いて、宇賀神は獰猛に言い放った。 「や、だ」 川嶋は強情に首を横に振る。 「暁臣、言えって」 更に強くそこを突き上げたら。 「あっ…ぃい……や、そこ、」 もう理性を焼き切られた川嶋が、白い喉を仰け反らせる。 「やっと言ったな…暁臣のイイトコなんか、お前より俺のほうが全部知ってるんだよ」 お前は俺のだし、俺はお前のだから。 「暁臣、絶対離さないから」 届く限り深く自身を埋めて、仰け反って離れそうになる身体を強く抱き寄せる。 最後はキスしながらイキたい。 そう囁いて唇を寄せたら。 塞ぐ瞬間、ずっと離さないで、と小さな呟きが漏れた気がした。
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