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そして。
川嶋はその日、数人の男子生徒に全裸に剥かれ、首に縄跳びを巻かれて学校中を引き回された。
当然、学校は大騒ぎになった。
そんなことをした相手の親は、典型的な「ウチの子がそんなことするわけありません」なタイプで。
川嶋に父親がいないとわかるや否や、徹底的に攻撃してきた。
「父親がいないから」「そちらに問題があったに違いない」
そして川嶋は、5年生の残り1ヶ月は学校へ行けず、6年から別の小学校に通うことになった。
川嶋は不安だった。
自分はどんなことをされても我慢はできる。
でも、再び母や祖母を悲しませるようなことにはなりたくない。
だから。
「先生、そいつの面倒俺が見ます。だから、隣の席にしてください」
真っ直ぐに彼を見るそのカッコイイ少年が手を挙げたとき、なんだかすごくドキドキした。
隣の席に座ると、彼は言った。
「暁臣って、かっけぇ名前だな」
アキって呼んでいいか?
川嶋は小さく頷いた。
そしたら、彼はすごく嬉しそうに笑った。
「アキ、ずっと俺の横にいろよ。俺がお前を守ってやるから」
川嶋の事情なんてなんにも知らないはずなのに、そいつはそんなことを言うのだ。
「俺、宇賀神龍之介。龍って呼んで。名字も名前も長いからさ、めんどくさいだろ?」
「龍」
言われるまま繰り返すと、宇賀神は更に笑顔を崩す。
そして、その自信満々の余裕たっぷりな態度が、一瞬だけ不安の色を覗かせた。
「お前が俺を好きになってくれるといいんだけどな」
背が高く顔もカッコイイこの少年を、好きにならないやつなんていないだろうに。
川嶋はそのとき、そんなふうに不思議に思ったのだった。
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