おまけ

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宇賀神は最初に宣言したとおり、川嶋を守ってくれた。 何か話しかけてこようとするクラスメイトたちを睨み付け、側に寄らないよう威嚇する。 川嶋はそれまでの小学校生活で、子どもは群れると怖い、という意識が染み付いていたので、宇賀神のそういう行動がとてもありがたかった。 そのカッコイイ少年が、自分だけと仲良くしてくれるのも、とても嬉しかった。 長い間いじめられることに慣れ、それを無表情で受け流すようにしていたので、川嶋は感情が顔に出にくく、その感謝や嬉しさが宇賀神に伝わらないのが残念だった。 「ウチに遊びにこいよ」 宇賀神にそう誘われたときは、夢見心地になったぐらいだ。 友達の家に遊びに行く、と告げたときの祖母の喜びようも本当に嬉しかった。 宇賀神の家はものすごく大きかった。 お金持ちなんだろうな、というのは、それまでもなんとなく感じていた。 しかし、途中で気づいた。 お金持ちなのは間違いないが、普通の家ではない。 家の中をウロウロするアウトローな男達が、宇賀神を見ると頭を深く下げて「おかえりなさいませ、坊っちゃん」と言う。 普通っぽい人たちもいるけれども、一目で堅気ではないとわかる人たちも。 それで、全ての謎が解けた気がした。 こんなにかっこよくて優しい宇賀神が、周りの子どもたちどころか先生たちにまで遠巻きにされている理由。 「お前が俺を好きになってくれるといいんだけどな」と言ったその理由。 みんな、宇賀神ではなく宇賀神の周りを見て彼を敬遠している。 彼ではなく、彼の家庭環境を見て悪いのは川嶋だと断罪した前の小学校の奴らと同じだ。 だけど。 川嶋は思う。 僕は、このかっこよくて優しくて強い友達が大好きだ。 周りは関係ない。 宇賀神が彼だけを見て「俺の横にいろ」と言ってくれたように、自分も彼だけを見て彼の横にいたい。 そう思ったら、周りの怖そうな男たちのことが全く気にならなくなった。 友達の家に遊びに来るということが初めての体験だったので、それで興奮していたから、というのもある。 宇賀神と一緒にゲームをしたり、おやつを食べたり、喋ったり。ただそんなことがすごく楽しくて。
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