おまけ

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翌週同じ授業に行くと、もちろん、その男も来ていた。 川嶋を探すようにキョロキョロしている。 見つけると、あのいやらしい視線を投げてきた。 じろじろ見るのは宇賀神が怖いのだろう、盗み見るような、だけど執拗な視線。 川嶋はいつもと同じに見える。 少なくとも、彼はどんなときでも取り乱したりしない。 宇賀神に抱かれて快楽に我を忘れているときを除いて。 でも、視界の端にそいつを見つけて、机の下で指を絡めるようにして握っていた手が強張るのを感じた。 宇賀神は安心させるようにその手を握る手にぎゅっと力を込めた。 指を動かし、川嶋の指の間を少し官能的に撫でる。 川嶋は、宇賀神に愛されているときが一番安心するから。 少しだけ驚いたように宇賀神の顔を見上げるけど、抵抗はしない。 目の淵がほんのり赤らむ。 それだけで壮絶な色気が漂うのは、もちろん知っている。 宇賀神は顔を寄せた。 「龍、授業始まる」 「まだ大丈夫だろ」 目元にちょっと唇を押し当てても、川嶋は嫌がらない。 人前であんまり過激な行為はダメ出しされるけれど、スキンシップぐらいは動じない。 イチャイチャするのは川嶋を安心させたいためもあるけど、その男を挑発するためでもある。 案の定、目の端で捕らえたそいつは、宇賀神の怖さを忘れてものすごい顔でこっちを睨んでいる。 醜い嫉妬の顔だ。 「アキ、ここでキスしたら怒るか?」 囁くように訊いたら、川嶋は少し首をかしげて。 「怒らないけど嫌だ」 龍にキスされたら、僕、もっと欲しくなって授業受けられなくなる。 それもそうか。 宇賀神は思う。 宇賀神がキスしたら見せるであろう川嶋の顔は、あんなやつに見せるのはもったいなさすぎる。 そこまでサービスしなくていい。 宇賀神は、握っていないほうの手で、川嶋の頬を撫でた。 「俺はキスしなくてもいつでもお前が欲しくて堪らないけどな」
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