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最初は普通にゲームをしていたのだ。
よくある対戦ゲームで、いつもは淡々と技を繰り出してくる川嶋に全然勝てないのに、たまたまうまい具合に技が決まって勝つことができたもんだから。
興奮して、「よっしゃあ!」とガッツポーズをしたとき、うっかりバランスを崩して川嶋の上に倒れ込んでしまった。
押し倒すような形になって、睫毛の一本一本が見えるぐらいの至近距離に川嶋の顔があるのに気づいたら。
ムラムラと何かが宇賀神の身体の中に沸き上がってきた。
彼は精通があったその翌日から、父親の命令で性的な教育をガッツリ受けさせられている。
だから、そのムラムラが何かなんて、ちゃんと知っていた。
宇賀神は、川嶋に欲情したのだ。
そもそも、川嶋に抱いていた「好き」という感情が友達としてのそれではないことに、彼はとっくから気づいていた。
だから。
本能のままにその唇に吸い付いたら、さすがの川嶋も驚いたように逃れようと身体を捩るから。
逃すまいとその細い身体を押さえつけることになる。
両手で細い手首を床に縫い付けて、背けようとする顔を、させまいと更に深く唇を割り込ませた。
舌を伸ばし、川嶋の口の中に侵入する。
温かく濡れた粘膜に触れることが、川嶋をこれまでで一番側に感じられて、教育の一環として交渉を持った女たちとは全然違う快感が背中を走り抜けた。
ひたすら吸い付いて、舐め回して、唾液も吐息も全部自分のものにしたくて、夢中になっていたら。
「んっ……」
思わず漏れた川嶋の声が、あまりにも甘い声だったからびっくりして。
チュッと濡れた音を立てて唇を離す。
はあ、と川嶋が熱い息を吐いた。
宇賀神を睨む瞳が潤んでいる。
普段よりずっと、壮絶に綺麗だ。
彼はうっとりする。
自分がこんな川嶋を引き出したのだ。
「…なんで、こんなことするんだ」
抗議の声が掠れている。
「お前が好きだから」
まだその細い手首は床に押し付けたままだ。
キスだけじゃ足りない。
触れてもいいか?
男を抱く方法は、さすがに彼への性教育には含まれていなかったけれども。
どこを使えばいいのかというのはわかっている。
そして、女性相手でならそっちの穴も経験済だ。
うまくやれる自信はある。
「嫌だ」
川嶋は彼を睨み付けたまま、迷いなく拒否の言葉を吐いた。
「それ以上触るなら、お前のこと嫌いになる」
そんなに瞳を潤ませて、頬を染めて、熱い息を吐いているのに?
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