茜色

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 白い煙を見ていた女の人だったが、何気なく気配を感じたのか、女の子へと視線を移し、その表情に気づいた。  「…!」  と気づくと、女の人は視線だけではなく、顔も女の子へと向け、  「何でもないわ」  と言いながら、困ったような笑顔を浮かべる。  今の女の人には余裕がなかった。  だから、女の子を安心させるような、笑顔さえ浮かべられない。  「……」  女の人がそう言うから、女の子はそれ以上何も言えなかった。  心配そうな表情をしたままの女の子を見つめ、女の人は  (…大丈夫)  と女の子にも自分にも言い聞かすように心の中で思う。
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