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「それよりも、さっきの話。説明して」
「あ、そうでした。今、隠世は荒れています。あちこちで争いが起こっています。本来、隠世を治めているのは、銀狐の僕と、金狐です。でも、ある日、雷獣がやってきて、この世界に呪(しゅ)をかけました。金狐は記憶を封印され、どこかに飛ばされてしまったんです。だから、どうかあなたの力で、雷獣を鎮めることと、金狐探しを手伝ってください」
先ほど分かったと言ってしまった手前、必死に頭を下げる彼を無下にはできない。
「分かった、私にできるか分からないけど、やるだけやってみる」
「本当ですか。ありがとうございます」
銀は喜びを隠せないのか、九本の尻尾をふりふり、今にも舞い上がっていきそうだ。
「では、早速行きましょう、雪奈さん」
「あの、銀さんが嫌じゃなければ、その堅苦しい敬語やめてほしいのだけれど」
雪奈はその方がいいのではと提案した。
「はい……うん。じゃあ、そうさせてもらう。僕のことも『銀』でいいよ」
「それと……。率直な疑問なんだけど、どうやって隠世に行くの?」
それはそうだろう。今まで自分がいる世界以外に別の世界があるなんて思ったこともなかったのだ。
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