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祈り歌
ここは隠世。
妖たちの世界。
ひょんなことから、私、東雲雪奈はあちら側の世界、隠世にいる。
事の発端は、二週間前。あの日私は、学校の帰り道、傷ついた小動物を拾った。雨の中、ガードレールと植え込みの間で、うずくまっていたそれを私は放っておけなかった。家に連れて帰り、泥を洗い流し、傷の手当をした。
「黒猫だと思ったけど、真っ白。この動物って……猫? 犬?」
その姿はまるで、狐のようだった。
「狐?なわけないよね。白いし、こんなところに狐はいないでしょう」
狐っぽい小動物を先にタオルで包んで、外に出し、自分もシャワーを浴び、お風呂から出てくると、白髪の見知らぬ少年が立っていた。いや、正確に言うと、頭の上からフワフワとした耳が生えている。しかも、お尻のあたりからは、これまた気持ちよさそうな尻尾が一本、二本、三本……。雪奈の見間違いでなければ、九本も生えている。
「落ち着け雪奈。これは夢。私は今夢を見ているんだ」
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