第一話
全1/6エピソード・完結
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第一話

 逢麻我町おうまがちょう五丁目十番地の十字路。北東の方角に、その屋敷はあった。 「うわ、雰囲気たっぷりだね。か、奏多かなた」 「思ったよりちゃんとした家だな。けど、なんか入るの面倒そうだぜ。てか、暑いよ、大也だいや」  クソ暑いのに腕にしがみついてきた大也を振り払い、錆びついた鉄の門扉を見上げる。高さ三メートルはあろうか。しかも先が矢じりみたいに尖っている。あれじゃあ、乗り越えるのは無理そうだ。 「なんだか蚊に刺されそう。見てよ、中。草ボーボーじゃん」  俺の左側で、莉々りりが唇を尖らせ、ぼやいた。言う通り、門の中は雑草が生え放題だった。触れれば切れそうなテキリスゲや俺たちの背丈くらいまであるセイタカアワダチソウなどだ。  この屋敷の住人が不審な死を遂げて以来、もう三十年以上、誰も住んでいないらしい。煉瓦の外塀には蔦がからみ、陽の当たらない部分は苔むしている。     
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